公開日:2026.09.25
SNSマーケティング
ソーシャルコマースは日本で定着する?日本市場の現在地と企業の参入判断
これまでのSNSマーケティングは、InstagramやTikTokで商品を紹介し、ユーザーを自社ECへ誘導する手法が一般的でした。このように、SNS上で認知を獲得し自社ECへとつなげる導線設計に加えて、商品の発見から購入までの全てをSNS上で完結させる手法の「ソーシャルコマース」が新たに注目されています。
その背景には、「TikTok Shop」の日本上陸が関係しています。2025年6月に日本で提供開始されたTikTok Shopは、企業の新たな販路として活用できるEC機能として、この1年で大きな広がりを見せています。
本記事では、ソーシャルコマースの基本的な仕組みを解説し、ソーシャルコマースの国内市場規模を分析、企業が参入を検討する際の判断ポイントなどをご紹介します。市場規模以外のデータにも注目し日本市場の現在地を分析していますので、ぜひ参考にしてください。
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「ソーシャルコマース」とは?基本的な仕組みと定義
ソーシャルコマースとは、商品の認知や情報収集、検討、購入までの購買行動をSNS上ですべて完結させる販売手法です。
従来のSNSマーケティングでは、投稿や広告を通じてユーザーをECサイトへ誘導する流れが一般的でした。これに対し、ソーシャルコマースは、SNS内にEC機能が組み込まれていることでユーザーが離脱することなく、シームレスに決済を完了できる仕組みです。
ソーシャルコマースの代表的なサービスとしては、2025年6月に日本で提供を開始した「TikTok Shop」が挙げられます。
近年では、TikTokのようなSNSを通じたショート動画投稿やライブ配信が広がり、ユーザーが自ら特定の商品を検索して見つける形ではなく、SNSの動画を見ている中で欲しい商品と偶発的に出会う「発見型コマース」へとシフトしています。ソーシャルコマースは、このような思いがけない購買欲求を最小限の画面遷移で売上へとつなげるインフラとして定義されます。
自社ECや従来のSNS集客との違い
ソーシャルコマースと、自社ECサイトや従来のSNS集客の大きな違いは「どこで購入手続きを完了させるか」また、「ユーザーにどのような購買体験を提供できるか」の2点にあります。
自社ECや従来のSNS集客では、商品を発見する場所と購入する場所が分かれているケースが多く見受けられます。たとえば、企業がInstagramで新商品に関する投稿をした場合、ユーザーが購入するまでの導線は以下の通りです。
1.投稿を見て商品を知る
2.企業のInstagramプロフィールへ移動
3.ECサイトへアクセス
4.商品ページを探す
5.決済する
この導線は現在も有効ではありますが、投稿から興味を持ったユーザーが外部サイトへ移動する段階で離脱してしまう可能性があります。一方、ソーシャルコマースの場合は前述のように、SNSを見て楽しんでいる状態で偶然目にした動画をきっかけに、そのまま数タップで購買体験を完結させることが可能である点が大きな違いです。
ソーシャルコマースを活用するメリット
企業がソーシャルコマースを活用するメリットは、販路が新たに増えることや、購入までの導線を短くできるというだけにとどまりません。
具体的には、
・画面遷移による煩わしさを解消することで、コンバージョン率(CVR)の向上が期待できる
・動画コンテンツのエンタメ性によって若年層や潜在顧客などにアプローチでき、新たな需要を掘り起こせる
・SNS特有の拡散力やUGC(ユーザー生成コンテンツ)の信頼性を利用し、広告費を削減できる
などが挙げられます。
関連記事:【企業向け】UGCマーケティングとは?メリットとキャンペーン成功事例7選
また、TikTok Shopでは、クリエイターに商品を紹介してもらい、売り上げに応じて成果報酬を支払う「アフィリエイト機能」の活用も可能です。
アフィリエイト機能ではクリエイターの影響力によって商品の魅力を広められるため、収益拡大が期待できます。
ソーシャルコマースの国内市場規模をデータから分析
ソーシャルコマースへの参入を社内で検討する際は、実際の市場データを確認しておくことが重要です。ここでは、公的機関や専門調査の最新データをもとに、日本の市場規模を分析します。
国内のBtoC及びBtoB市場から見るソーシャルコマースの今後
出典:令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(METI/経済産業省)
2025年8月に経済産業省が発表した「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」の結果によると、2024年の日本国内におけるBtoC(消費者向け)EC市場の規模は26.1兆円で、前年より5.1%増加しています。BtoB(企業間取引)のEC市場規模は514.4兆円で、前年より10.6%増加しています。
このデータではBtoC・BtoBどちらの市場も順調に拡大を続けていることが分かり、デジタル化が進んでいると判断できます。
出典:令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(METI/経済産業省)
なかでも企業が注目すべき項目は、食品・生活家電・化粧品・医薬品・家具・衣類などの「物販系分野」です。物販系分野のEC市場規模は15兆2,194億円まで拡大しており、前年比は3.70%増となりました。
また、物販取引全体のうち、ネットショッピングなどオンライン上で行われる電子商取引(EC)が占める割合を示す「物販系のEC化率」は、BtoCで約9.78%(前年比0.4ポイント増)です。このデータは、日本の消費者にとって、オンライン上で買い物をすることが日常的になっていることを示しています。
こうした背景から、日本のソーシャルコマース市場規模は今後も成長を続けると考えられます。
海外市場との比較
日本のソーシャルコマースが今後どうなるかを予測するには、先行している海外の状況を把握することが重要です。
マーケットリサーチプラットフォーム「Research and Markets」の調査によると、ソーシャルコマースの先進市場とも言える中国では、中国版TikTok「抖音(ドウイン)」などのSNSで動画やライブ配信を通じて商品を購入する購買体験が定着しています。
2022年から2025年にかけて力強い成長を遂げ、年平均成長率(CAGR)は10.8%に達しました。今後も上昇すると予測され、2031年までに年平均成長率7.0%で成長することが見込まれます。
出典:中国のソーシャルコマース市場規模、シェア、および2031年までの予測
日本は大手ECモールが強いこともあり、中国と比べてソーシャルコマースの普及が遅れていたと言われています。しかし現在、日本でも動画を見て直感的に欲しいものを買うという文化が急速に広がっているため、国内市場規模は成長の余地が十分にあるでしょう。
TikTok Shopの日本市場は上陸から1年で急拡大
日本のソーシャルコマース市場を考えるうえで、現時点で具体的なデータを確認できるのがTikTok Shopです。TikTok Shopは2025年6月に日本で提供を開始し、上陸から1年で急速に拡大しています。
ここでは、単純な市場規模だけではなく、利用者・コンテンツ・購買という複数の指標から日本市場の広がりを見ていきます。
日本国内の市場規模は1年で500億円規模に
2026年7月に公開された利用動向データでは、利用者数が2025年7月時点から30倍以上になり、顧客基盤が大きく拡大していると発表されました。また、民間調査会社Nintの推計では、開始1年の流通総額は約536億円にのぼります。
なお、TikTok公式の発表によると、流通総額(GMV)の7割以上は、ショート動画やLIVE配信といったコンテンツをきっかけにした購入でした。すなわち、TikTok Shopにおけるユーザーの購買体験は、動画を視聴するなかで商品を知り、理解を深めたうえでそのまま購入するという流れが大半です。
参考サイト
TikTok Shop、日本での提供開始から1年 ~利用動向データおよび事例を公開~ – Newsroom | TikTok
ITmedia ビジネスオンライン
利用者の6割が35歳以上
TikTok Shopの日本市場で特に注目したいのが、利用者の年齢構成です。
TikTokは若年層向けとイメージされがちですが、TikTok公式の利用動向データによると、2026年6月時点での利用者の約4割が18歳から34歳、約6割は35歳以上でした。その背景として、TikTok自体が幅広い年代に親しまれるSNSへと変化したことが挙げられます。
このデータを踏まえると、若年層向けの商品にとどまらず、食品や日用品といった生活関連商品など、より幅広いカテゴリーでの活用が期待できます。
参考サイト:TikTok Shop、日本での提供開始から1年 ~利用動向データおよび事例を公開~ – Newsroom | TikTok
販売データから見る日本市場の特徴
TikTok Shopの日本上陸から1年の販売データを分析すると、以下のような特徴が見られます。
ひとつは、コンテンツが購買を生み出しているということです。前述のように、GMV(流通総額)の70%以上がコンテンツを経由したものと判明しています。これは、日本のユーザーがショップタブから検索して購入するよりも、動画や配信画面にある商品タグから購入する傾向があることを示しています。
次に、リピート率が高いことも挙げられます。TikTok For Business ブログでは、実際にTikTok Shopを活用している株式会社Cellestが、約8割という高いリピート率を明らかにしています。商品の認知から決済までのすべてをTikTok内で完結できる手軽さが購入に対する心理的ハードルを下げ、その結果リピート率を高めていると言えます。
参考サイト
TikTok Shop、日本での提供開始から1年 ~利用動向データおよび事例を公開~ – Newsroom | TikTok
月商2億円超の「ぞうねこちゃんねる」が明かす、TikTok Shop成長の方程式 | TikTok For Business ブログ
企業のソーシャルコマース参入状況
市場への参入を判断するには、消費者側の動きを見るだけでなく企業側の動きを確認することも重要です。企業のソーシャルコマース参入状況を把握し、判断材料にしてください。
TikTok Shopへの出店が増加傾向
TikTok Shopへ出店する企業は増加しています。 2025年6月の提供開始から約半年で、アクティブセラー数は提供開始時と比べて約3倍となりました。加えて、クリエイター数は20万人以上まで拡大しています。
これは、ユーザー側のメリットと同様に、企業側もシステム的な手間が少なく済むことが出店を後押ししていると考えられます。
参考サイト:TikTok Shop、日本での提供開始から半年が経過。流通総額の約70%が動画やLIVE配信等のコンテンツ起点と判明。 「ディスカバリーEコマース」を体現する成長を実現 – Newsroom | TikTok
食品・グルメジャンルは参入が進みやすい
ソーシャルコマースと特に相性の良いカテゴリーとして、食品・グルメジャンルが挙げられます。さまざまな商品があるなかで、食品関係は成果が出やすい傾向です。
食べ物を紹介する際、写真の場合は味や食感、調理方法などが十分に伝わりません。一方、動画やLIVEでは、調理や実食、アレンジ、実際に食べている人のリアルな反応などを見せることが可能です。
視覚や聴覚に直接アプローチできるコンテンツは、ユーザーの「食べてみたい」という感情を強く引き起こします。そのため、企業規模や知名度に左右されず、大きな売上につながる可能性もあります。
大企業だけでなく、中小企業からも注目されつつある
TikTok公式の動向データでは、地域の中小事業者から大手企業まで、さまざまな事業者がTikTok Shopを新しい販売チャネルとして活用していると発表されています。
2026年2月には、地域経済の活性化を目的とした新プロジェクト「TikTok Shop Local」の始動が発表されました。TikTok Shop Localによって、地域の名産品や地元事業者が手がけた商品など、これまで埋もれていた商品が自然に発見され、購入へとつながる可能性が高まります。
こうした背景から、中小企業からの注目が集まるようになったと考えられます。
参考サイト
TikTok Shop、日本での提供開始から 1 年 ~利用動向データおよび事例を公開~ – Newsroom | TikTok
TikTok Shop、地域の魅力的な商品を全国へつなぐ新プロジェクト「TikTok Shop Local」を始動 – Newsroom | TikTok
参入を検討する企業が押さえるべき判断ポイント
日本のソーシャルコマース市場が成長していても、参入した企業が必ずしも成功するとは限りません。最後に、参入を検討する企業に向けての判断ポイントを2つご紹介します。
市場規模のみを基準にしない
市場規模の確認は、ソーシャルコマース参入を検討する際の指標のひとつとして不可欠です。ただし、市場規模のみならず「自社の商品がソーシャルコマースに適しているか」をしっかりと判断する必要があります。
具体的には、
・動画で紹介した際、その良さが数秒で伝わる商品かどうか
・ユーザーがその場で即決できるような価格帯か
・クリエイターがレビューするのに適しているか
・既存の販路では獲得できていない層に届けられるか
などを踏まえたうえで判断することがおすすめです。
消費者の購買心理を理解する
SNS上で商品を購入する消費者の心理を理解することも重要です。
検索型のECサイトやアプリでは、ユーザーがすでに欲しい商品や、購入することで解決したい悩みを抱えているといったケースもあります。
一方、SNSではユーザーが必ずしも商品を探しているとは限りません。
動画を見ているなかで偶然商品を知り、「この商品は便利そう」「自分も試してみたい」と興味を持つユーザーも多く見られます。そのため、ソーシャルコマースでは商品を売ることに加え、商品を発見してもらうコンテンツを意識する必要があります。
従来の広告のような売り込み感を払拭し、ユーザーの感情に寄り添ったコンテンツ作りができるかを考慮しましょう。
まとめ
本記事では、国内のBtoC及びBtoB市場データやTikTok Shopの動向データなどをもとに、日本のソーシャルコマースの現在地や参入する際の判断ポイントを解説しました。
市場が大きいから参入するのではなく、ソーシャルコマースによって既存ECでは獲得できていない層を獲得できる可能性や、参入することで売上を増やせる可能性を意識することが重要です。また、既存ECの代替としてでなく、新たな顧客接点、また新たな販売チャネルとしての活用が効果的です。
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