公開日:2025.11.25
更新日:2025.11.22
SNS運用
薬機法とは?SNS運用における注意点やNG表現を企業向けに解説
企業がInstagram、X、TikTokなどのSNSを運用することは、自社の商品やサービスを広く認知させるうえで欠かせない手法です。しかし、医薬品や化粧品、サプリメントなどを扱う企業の場合、投稿内容によっては薬機法(旧・薬事法)に違反するリスクがあるため、十分な注意と対策を講じる必要があります。
本記事では、薬機法の基礎知識やSNS運用における薬機法リスク、SNSで起こりやすい違反例などを企業向けに解説します。
SNSは感覚的な表現や体験談を用いた発信が多くなりやすく、気づかぬうちに誤認が生じるケースも少なくありません。自社のSNSアカウントを安心して運用できるよう、薬機法のNG表現や注意すべきポイントを正しく理解しておきましょう。
目次
SNS運用で気を付けるべき「薬機法」とは
薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称です。
医薬品や化粧品、健康食品などの製造・販売・広告・表示に関するルールを定めた法律で、製品の有効性や安全性を確保し、誤った広告によって消費者が惑わされることのないように制定されています。
SNSでは、商品やサービスに関する投稿が広告とみなされる場合が多く、意図せず薬機法に抵触してしまうことがあります。そのため、企業がSNSを運用する際は表現や言い回しに注意しなければなりません。
薬機法の基礎知識
薬機法に違反せずにSNSを運用するには、薬機法の成り立ちや目的、適用範囲などを正しく把握し、適切に理解しておくことが不可欠です。
2014年に「薬事法」から名称変更
薬機法はもともと「薬事法」という名称で知られており、2014年の法改正によって「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「薬機法」へ変更されました。改正によって再生医療等製品が規制対象に加わり、また医療機器プログラムや医薬品のインターネット販売も規制の対象に加えられています。
参考リンク:厚生労働省 薬事法等の一部を改正する法律について
目的と適用範囲
薬機法は、保健衛生の向上を図ることを目的とされています。消費者が医薬品や化粧品などを安心安全に利用でき、かつ誤った情報によって不利益を被らないようにするためであることから、SNS投稿も規制の対象です。
適用範囲として、以下の品目が挙げられます。
・医薬品
・医薬部外品
・化粧品
・医療機器
・サプリメント
・健康食品
・医療関連サービス
参考リンク:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov 法令検索
区分による違い
薬機法は、区分によって許容範囲が異なります。自社が取り扱う商品やサービスの区分を明確にし、該当する区分に許された表現を使用しましょう。
【医薬品】
効能効果を直接表現できますが、承認されている効能効果のみ使用可能です。未承認の効能効果をうたったり、虚偽・誇大な表現を使用したりすると違反となります。
【医薬部外品】
医薬品ほどの強い表現はできません。また、医薬品だと誤解されるような表現も違反対象となります。
【化粧品】
化粧品に対して承認されている56の効能効果を超えた表現は違反対象となります。たとえば「シミが消える」「抜け毛を改善する」などの表現は、化粧品の区分では使用できません。
参考リンク:厚生労働省 化粧品の効能の範囲の改正について(◆平成23年07月21日薬食発第721001号)
【健康食品・サプリメント】
食品として扱われるため薬機法の区分には含まれません。しかし、病気・疾患の治療や予防を謳った場合、医薬品的な効能効果に該当する表現を使用した場合などは、薬機法の違反となります。「健康をサポート」「栄養を手軽に補給」といったような、食品の範囲内での表現に留めておきましょう。
参考リンク:医薬品的な効能効果について|健康食品の監視指導について|東京都保健医療局
SNS運用で注意したい薬機法リスク
SNSにおいて薬機法はキャプションだけでなく、写真・動画・ライブ配信などさまざまなコンテンツが対象となります。意図せず違反を生み出してしまわないよう、コンテンツごとに注意すべき点を理解し、事前に対策をしておくことがおすすめです。
投稿する写真やキャプションにおける注意点
InstagramやXなどの投稿では、投稿する画像内にNG表現がないか確認する必要があります。広告用に作成した画像に違反はないか、写真に写りこむ店舗のPOPや商品パッケージのテキストに問題はないかなど、投稿前に必ず確認しましょう。
ショート動画における注意点
TikTok、Instagramのリールといったショート動画では、テロップや字幕だけでなく、ナレーションでの発言も薬機法の対象となります。
・誇張や断定とみなされる表現
・恐怖心を煽るナレーション
・視覚効果や映像表現による効能効果の強調
などを避けることでリスク回避できます。
ショート動画のように情報がすばやく伝わるコンテンツは、ユーザーの共感を呼びやすい反面、その表現が不当な広告として薬機法に抵触する可能性があるため、表現には十分配慮してください。
ライブ配信などリアルタイムでの発言における注意点
ライブ配信はユーザーとリアルタイムでやり取りできるコンテンツであり、無意識にNG表現を使用してしまう場合も少なくありません。また、即座に修正や削除をすることが難しいため、事前の準備や対策が不可欠です。
Instagram Live、TikTok Live、YouTube Liveなどで配信を行う際は、断定表現・過度な強調に気を付けましょう。配信者側からの発言だけでなく、コメントの読み上げにも注意が必要です。
SNSで薬機法違反になりやすいケースと対策
SNSで特に薬機法違反になりやすいケースを3つ紹介します。
・断定的な表現をしている
・比較やランキングなどによって誤認の可能性がある
・「個人の感想」でも違反になる場合がある
違反に抵触しないよう対策例を参考にしてください。
今後の投稿に限らず、すでに自社のSNSを運用している場合も、該当するような投稿がないか確認することがおすすめです。
断定的な表現をしている
効果や結果を保証する表現は典型的な違反表現です。仮に科学的根拠がある場合でも、効能効果を誤認させてしまう表現は違反となる可能性が高まります。断定的な表現は虚偽・誇大広告として厳しくチェックされますので、効果の可能性を間接的に伝える程度に留めておきましょう。
【NG表現例】
「〇〇を使えば必ず治る」「〇日で改善」「確実にシワがなくなる」「100%効果がある」「公的な承認や認証」「医学的に証明されている」「厚生労働省が認めた成分」など
【対策例】
・「必ず」「絶対」などの断定は避け、「期待できる」「サポートする」といった表現に言い換える
・医師による効能効果の保証や、公的な承認や認証があるような表現はしない
・効果には個人差があることをしっかりと明記する
比較やランキングなどによって誤認の可能性がある
SNSでよく見られる他社製品との比較や自社製品のランキング紹介などは、根拠を示さない限り誇大広告とみなされます。キャッチコピーとして比較表現を使う場合も同様です。薬機法に加えて、景品表示法の優良誤認表示にも注意する必要があります。
【NG表現例】
「業界No,1」「他社製品よりも〇倍効果がある」「満足度99%」「〇〇市場で人気No,1」など
【対策例】
・他社製品を誹謗中傷する表現や自社製品の優位性を強調する表現は避ける
・根拠不明なランキングは控え、調査結果の情報源を明確にする
・比較する際は自社製品同士で行い、対象製品を明らかにする
「個人の感想」でも違反になる場合がある
体験談や使用感を伝える際に「個人の感想です」と記載しても、企業が広告目的で発信していると薬機法の対象となります。
また、PR投稿などユーザーの投稿を広告として活用する場合も同様に注意が必要です。ユーザーの投稿であっても、企業側が投稿内容を確認または指示していれば企業広告とみなされます。
【NG表現例】
・「〇〇を毎日塗るだけでシミが消えた」など、誤認を与える表現が使用されたユーザーの体験談を引用する
・ユーザーが「個人の感想です」と付けたうえで医薬品的な効能効果を謳い、企業がその投稿を広告に利用する など
【対策例】
・ユーザーが効能効果に言及している体験談は広告として利用しない
・製品の感想やユーザーの声を伝える場合は、使用感や香りなどに留める
・「個人の感想」のみならず「効果の保証ではないこと」を明確にする
企業が薬機法に抵触せずSNSを運用するためのポイント
企業が薬機法に抵触せずSNSを運用するには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
・効果よりも、使用感やイメージについて訴求する
・根拠のある情報をベースに発信する
・社内でのチェック体制を整える
・SNS運用代行会社へ相談する
以下でそれぞれ詳しく解説します。
効果よりも、使用感やイメージについて訴求する
薬機法に違反せず商品の魅力を伝えるには、効果よりも使用感や印象、世界観などに触れた訴求を心がけましょう。たとえば、「肌がうるおう」「しっとり感」「心地よい香り」など、イメージや使用時の感覚についての訴求がおすすめです。
また、商品やサービスを利用することで得られる情緒的価値を伝えるのもひとつの方法です。「お気に入りの香りで気分リフレッシュ」「忙しい朝でも時短で使える」のような表現をすると、ユーザーがよりイメージしやすくなります。
根拠のある情報をベースに発信する
曖昧な情報発信は薬機法の違反リスクを高めます。正確かつ透明性のある情報発信を心がけ、客観的な事実情報をベースに発信しましょう。データを引用する際は、公的機関が発表した統計データや、公正な第三者機関による科学的データなどを使用します。
配合成分についての訴求でも、成分による効果を保証するような表現は避け、成分そのものの情報提供のみにすることがおすすめです。
社内でのチェック体制を整える
SNS運用ではスピード感が求められるため、あらゆるチェックが後回しになりがちです。
・投稿前の多重チェックを徹底し、段階的に確認する
・薬機法のルールやNG表現をまとめた資料を社内で共有する
・専門的な部署または担当者を設ける
などを見直し、社内の確認不足から薬機法に違反してしまわないよう体制を強化してください。
SNS運用代行会社へ相談する
社内での対応が難しい場合は、SNS運用代行会社に相談し、その専門性を活用するのも有効な手段です。代行会社は、プロの視点からリスクを最小限に抑えつつ運用を行うだけでなく、万が一トラブルが発生した際にも迅速かつ適切に対応してくれます。
SNS運用代行やマーケティング支援を行っている株式会社ユナイテッドアニマルズは、薬機法の適用範囲となる品目を取り扱ったSNSの運用実績も豊富です。リスク管理を徹底し、SNSを戦略的に活用したい場合には、ぜひご検討ください。
SNSで起こりやすい薬機法の違反例
最後に、SNSで起こりやすい薬機法の具体的な違反例と、あらかじめできる対策を紹介します。
ビフォーアフター写真や体験談の投稿
前述したように、「個人の感想」も違反になる可能性があります。これにより、使用前後の変化を伝えるビフォーアフター写真や、ユーザーのリアルな体験談は、グレーゾーンでもあるため注意が必要です。たとえ使用したユーザーが実際に効果を実感していたとしても、「誰にでも効果がある」と誤認される表現は避けましょう。
やむを得ず写真や動画でビフォーアフターを伝える際は、「仕上がりイメージ」「個人の感想であり効果には個人差があります」などの注意書きを付けることがおすすめです。
【具体的な違反例】
・化粧品の効果として、シミが消えることを示唆するような顔写真を使用する
・ユーザーが投稿した「このサプリを飲むだけで〇kg痩せた」という投稿を企業アカウントでリポストする
キャンペーン投稿やインフルエンサーとのタイアップ
企業が行うSNSキャンペーンやPR投稿、またインフルエンサーとタイアップをする場合の表現内容も対象です。企業がかかわった投稿が広告として扱われるため、インフルエンサー側の発信内容にも責任が生じます。これにより、薬機法に違反する表現があれば企業側が処罰対象になることも有り得ます。
関連記事:【企業向け】インスタのタイアップ投稿とは?設定のやり方や活用するメリット
インフルエンサーを起用する際は、契約時に薬機法についてしっかりと情報共有し、投稿前の事前確認を徹底してください。
【具体的な違反例】
・キャンペーン開催におけるSNSの告知で「いま購入しないと悪化する」「〇〇のままでは深刻な病気になる」「このままでは危険!すぐに使用してください」など、恐怖心や緊急性を不当に煽る表現をする
・インフルエンサーとのタイアップにおいて、インフルエンサーが「このクリームでシミが全部消えた」など事実と異なる断定的な表現をする
誤認されやすい広告表現を用いた投稿
誇張された表現や誤認させる表現は、違反の対象となるだけでなくユーザーの信頼を損ねる可能性もあります。客観的に見て、その投稿がどのような印象を持つかを社内で確認しましょう。
【具体的な違反例】
・「1週間でこの変化!」「塗るだけでマイナス〇kg!」などのキャッチコピーを使用する
・化粧品の広告で医療機関をイメージするような画像を使用し、医師や専門家による保証があると誤認させる
まとめ
薬機法は、製品の有効性や安全性を確保し、消費者を守るための重要な法律です。企業がSNSを運用する際には、薬機法を正しく理解し誠実な情報発信を行うことで、ユーザーからの信頼獲得とブランドイメージの向上につながります。
本記事で紹介したNG表現や注意点、対策を参考に、リスクを抑えたSNS運用を目指してください。
また、社内での体制に不安がある場合は、薬機法の知見を持つSNS運用代行会社に相談し、安全で効果的なSNS運用を実現しましょう。
SNS運用代行・マーケティング支援なら
ユナイテッドアニマルズへ
ユナイテッドアニマルズでは、インフルエンサーのマネジメント・プロデュース・育成およびクライアント企業のマーケティング戦略立案・広告・宣伝支援を行っています。
また所属インフルエンサーによるプライベートブランドの開発、クライアント企業とのタイアップ商品開発、販売も行っています。
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