2023.12.26
SNS運用
ステマ規制とは?企業がSNS投稿をする際に気をつけるべきこと
SNSの影響が売上に与える影響が大きくなり、企業は積極的にSNS投稿を行うようになりました。
企業はインフルエンサーを起用し、効果的なマーケティングを進める一方で、消費者は広告と気付かずにSNSを閲覧することが増え、これが現在「ステルスマーケティング」と呼ばれ、問題となっています。
本記事はステルスマーケティングの問題点から、対策方法まで解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ステマ(ステルスマーケティング)とは
ステルスマーケティングとは、SNSや通販サイト、口コミサイト、ブログなどで、宣伝にも関わらず、まるで個人が投稿したかのように見せかけ、商品を宣伝したり、商品のレビューを書いたりしている行為です。
「内密」「こっそり」という意味の「stealth」という英語が名称の由来です。
EUやアメリカなどの諸外国では、以前からステルスマーケティングは違法とされていましたが、日本では法規制が遅れており、あくまで自主規制を促すのみでした。
しかし、2021年には、新聞や雑誌、テレビ、ラジオの広告費をインターネットの広告費が上回り、ステマが非難を浴びるようになります。その結果、2023年10月1日には、ステルスマーケティングが景品表示法違反として規定されました。
参考:消費者庁 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。
ステマ(ステルスマーケティング)でよくある2つの手法
ステマの代表的な手法は主に「口コミサイトのなりすまし」「利益提供による情報発信」の2つです。これらの手法は、マーケティングの透明性が求められる現代において悪質な行いと見なされます。
それぞれについて詳しく解説します。
口コミサイトのなりすまし
中立的な立場での批評を装ったり、直接の利害関係のないファンを装って口コミを書く手法です。
例えば、下記のような例です。
- 常連客を装って飲食店の口コミサイトで自社の店舗に高評価の口コミを書く
- 通販サイトで購入者を装って高評価の口コミを書く
- ライバル店舗に低評価の口コミを書く
以下は、総務省が2016年に実施した調査に関する内容です。商品購入時において、レビューをどの程度参考にするかが調査されています。
20代から60代までの全世代において、「かなり参考にする」「まあ参考にする」が合わせて約60%となっており、半数以上がレビューを参考にしていることがわかります。
年代が若いほど、参考にすると回答した割合が高く、若い世代ほどレビューを参考にしている傾向が見られます。
さらに、「まったく参考にしない」と回答した人以外の約80%がレビューを読んだことで商品を決定した経験があると回答しています。
出典元:総務省
口コミは購買行動に大きな影響を与えます。偽の口コミを書くことは、良い製品やサービスを選びたいという心理を悪用した行為です。
利益提供による情報発信
企業が第三者に報酬や特典を渡し、それを隠して売り込む手法です。
例えば、芸能人に報酬を支払ってプロモーションを依頼し、本人が実際に使用していないのに「◯◯を愛用中。おすすめだから使ってみてね。」と虚偽の情報をシェアする例があります。
明らかな宣伝を、自発的な発信だと思わせる悪質な手法です。
ステマ(ステルスマーケティング)が増えた理由
ステマが広まったのは、主に以下の2つの理由が考えられます。
低コストで効果的なマーケティングができる
1つ目は、低コストで効果的なマーケティングができるからです。
通常の広告出稿には、メディアによっては数十万円から数千万円という予算が必要です。芸能人を起用するとさらに費用は跳ね上がります。
それに比べ、ステマの費用は比較的安価に実施できます。一般的にインフルエンサーを起用する費用は「フォロワー数×単価」で決まります。
内容によりますが、単価は2円から5円程度が相場です。例えば、フォロワー10万人のインフルエンサーに依頼すると費用は20万円から50万円という計算です。有名インフルエンサー同士がシェアすることで波及効果も見込めます。
また、自発的なシェアだと思われたほうがより一層効果があると考え、残念ながらマーケティング担当者は悪質な手法と理解しつつも、ステマに手を出してしまうこともあります。
ステマという認識をせずに行っている
ステマを悪い行為だと意識せずに行ってしまっている場合もあります。法改正以前は基準が不明確で、担当者も認識不足だったと考えられます。
また、インフルエンサー側も理解が不足しており、悪い行為だと意識せず無自覚に行ってしまうことがよくあります。
2022年8月の消費者庁のアンケートによると、ステマの依頼を受けた理由の約64%が「ステルスマーケティングに対する理解が低かった」という回答でした。
出典元:消費者庁 ステルスマーケティングに関する検討会 報告書
SNSは比較的歴史の浅いメディアであり、その運用方法も手探り状態です。実施した施策が意図せずステマになることもあります。
ステマ(ステルスマーケティング)のリスク
2023年10月の法規制によりステマは違法となり、処罰の対象となります。「知らなかった」では済まされませんので以下のことをきちんと理解しておく必要があります。
消費者や取引先からの信用を失う
ステマは消費者を欺く手法であり、発覚すると消費者や取引先から信用を失います。
消費者は広告だと理解していれば、「内容が大げさなのでは?」と慎重に内容を確認します。しかし、中立的な立場の人間の口コミは、あっさりと信用してしまうこともあります。
このような心理を利用して購入を誘導しようとするため、ステマは消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為です。
誤った情報を受けた場合、消費者はだまされたと感じ、不満や不信感を抱きます。
さらに、一度ステマが発覚すると、以降の正当な情報発信も疑われます。消費者や社会からの信用を失った企業と、取引を継続しようと思う取引先は少ないでしょう。
失った信用の回復は容易ではありません。ステマは一時的な売上をもたらすかもしれませんが、中長期的には信頼性やブランドイメージを損ねる結果を招きます。
景品表示法違反になる
2023年10月1日の法改正により、ステマは景品表示法違反になりました。
違反すれば再発防止を求める措置命令が出され、事業者の名前や違反内容が公表されます。措置命令に従わない場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金などが科されます。
規制される媒体はオンラインに限らず、チラシ・雑誌・テレビ・コマーシャル・店頭の実演販売なども含まれます。
法的に明確な違反となるため、知らなかったでは済まされません。
ステマ(ステルスマーケティング)になりやすい投稿や広告
マーケティング担当者は、無意識にステマを行っていないか注意が必要です。どのような投稿や広告がステマになりやすいかを解説していますので、マーケティングを行う際は気をつけてください。
従業員が自社商品について触れた投稿
従業員が自身のSNSで自社商品に言及するのは、控えるのが賢明です。
営業、広報、開発などの担当者が商品の認知向上のために投稿を行い、そのなかで明確に広告と表記しなかった場合はステマとなり得ます。子会社や販促・開発に関わる取引先の社員も含まれるため注意が必要です。
過去に、メーカーの広報担当者が社員だと明かさないままインフルエンサー活動を行い、自社商品を何度も紹介したことで、素性が明らかになり批判を浴びた事例があります。
「私は〇〇株式会社の社員です。◯◯という新商品が出ました。」など、社員だという立場を明確にする必要があります。
販売や開発に関わらない社員が、一般消費者でも知ることができる情報をもとに販売促進と無関係な投稿を行ってもステマになりません。
しかし、社内でしか知り得ない情報なのか、一般消費者も知っている情報なのかは社員自身でも見極めが難しい場合もあります。
関係者は安易に自社商品についてはSNSなどに書かないよう、周知することが重要です。
第三者に明示的に依頼・指示していない投稿
第三者には明示的に依頼や指示をしていない投稿であっても、状況によってはステマと見なされることがあります。
インフルエンサーなどに依頼する場合は、企業経由の依頼という事実を明記してもらいましょう。しかし、客観的に見て企業が投稿に関与していると判断されると、ステマになってしまう可能性があります。
具体的には、下記のような例があげられます。
- マーケティング担当者がインフルエンサーに無償で試供品を渡し、Xでのシェアを頼んだ。PRをしてほしいと明示的に依頼をしていないが、インフルエンサー側が意向を汲み取ってPRと受け取れるような内容を記載をした。
- マーケティング担当者が、今後報酬が発生する取引を行う可能性を遠回しに想起させ、インフルエンサーが期待して商品をPRするような内容の投稿を行った。
- 飲食店でお店のことをシェアすればドリンク一杯無料と、対価を与えてシェアを促した。
「メール・書面・口頭のやり取り」「対価の内容」など総合的な観点から、企業が投稿に関わっていると認識された場合、ステマとなる危険性があります。
企業によるものだとわかりにくい広告
受け手が企業の広告だと気付きにくい表記や表現が用いられた場合も注意が必要です。
わかりやすいかどうかは、特定の文章・図表・写真から受ける印象でなく、広告内容全体から受ける印象・認識が基準となります。広告と記載していても、受け手が見て不明瞭なこともあります。
具体的には、以下のような表記が例としてあげられます。
- プロモーションとまったく表記されていない
- 表記が周りの文字と比べて小さい
- 文字が薄く不明瞭
- 大量のハッシュタグの中に広告である旨が埋もれている
- 動画の中で、見分けがつかないほど一瞬の間のみ広告だと表示される
誰が見てもすぐに広告だとわかる表記をする必要があります。
ステマ(ステルスマーケティング)の規制対象外となるもの
これまでステマ規制の対象について解説してきましたが、規制対象外となるものもあります。それぞれ、ご紹介します。
第三者の自由な意思による投稿
第三者の自由な意思による投稿は、規制の対象外です。具体的には、下記のような例があげられます。
- 購入者自身の意志で口コミを書いた
- 試供品を受け取り、自発的にブログに感想を書いた
- 企業のキャンペーン応募のためリポストをした
- 芸能人がメディアで自社商品を話題にしたので、お礼に同じものをプレゼントした
上記は自発的に発信をしているので、規制の対象外です。
広告であることが明らかなもの
誰が見ても広告だと明白なものは、規制の対象外となります。
例えば、以下のものは規制の対象外です。
- テレビコマーシャル
- ラジオコマーシャル
- ポスター
- 企業の公式サイトや公式SNSアカウントの投稿
観光大使・ブランドアンバサダーがプロモーションを行う場合も、依頼を受けていることが社会通念上明白なので、対象になりません。
広告であることが、一般の認識として明確かどうかが重要となります。
ステマ(ステルスマーケティング)にならないための4つの対策
ステマを行うと、信用を失ったり法律に違反するなど、大きなリスクが存在します。
ステマにならないための具体的な4つの対策をご紹介しますので、意図せず行ってしまわないよう参考にしてください。
広告であることを明示する
SNSを使ったプロモーションをお願いする場合は、誰が見ても広告だとわかる表記が重要となります。各プラットフォームの機能を使用してPR表記をしてもらうのが理想です。
FacebookとInstagramには「タイアップ投稿」という機能があります。この機能を使えば、写真やストーリーズにひと目でプロモーションとわかるような表示が可能です。
YouTubeでは、動画公開時に「有料プロモーション設定」が可能です。この設定を行うと、冒頭の10秒間、「プロモーションを含みます」とテロップが表示されます。長時間の動画の場合は、冒頭だけでなく一定時間ごとにプロモーションだと表示するのが望ましい対応です。
参考:有料プロダクト プレースメント、スポンサーシップ、有料おすすめ情報を追加する
TikTokでは配信内容を「ブランドコンテンツ」に設定する機能があります。この設定をすれば、プロモーションであることがコンテンツに表示されます。
Xでプロモーションを行う際には、ハッシュタグをつけます。具体的には「#プロモーション」「#PR」「#宣伝」「#広告」とハッシュタグをつけます。複数のハッシュタグをつける場合は、最初につけるなど、ひと目でわかる位置に表記する必要があります。
プラットフォーム側でも、専用の機能を用意しているので、活用するのがおすすめです。
各プラットフォームのサイトにはブランドコンテンツポリシーが記載されているので、確認してみてください。
参考:Meta ブランドコンテンツポリシー
参考:YouTubeのコミュニティ ガイドライン
参考:TikTok ブランドコンテンツポリシー
参考:Twitter上でのブランドセーフティ
インフルエンサーにプロモーションをお願いする際には、広告と明確に表記するように伝えましょう。「伝達ミスで表記がされなかった」ということが起きないように注意が必要です。
発信者と企業の関係性を明示する
インフルエンサーにプロモーションをお願いする際には、インフルエンサーと企業との関係性を明白にする必要があります。
「〇〇(スポンサー名)様とのタイアップ企画です」「この◯◯は◯◯(スポンサー名)様にプレゼントしていただきました」というように関係性を書いてもらいましょう。
SNSを利用するユーザーのリテラシーが高くなった現在では、ステマはすぐに気付かれ炎上してしまうこともあります。そのようなリスクを回避するには、発信者と企業の関係を明確にすることが大事です。
SNSに関する社内ルールを策定する
SNSに関する社内のルールを決めておくことも大切です。「社員が自身のアカウントで投稿する際のルール」「会社でSNSマーケティングを行う際のルール」の2つを定めるのが理想です。
まず、社員が自身のアカウントで投稿する場合です。社員のうっかりした投稿でステマになることがないよう、SNS利用のルールを定めておきます。「個人アカウントでも、自社に関連する投稿は禁止」といったルールを定めておくと安心です。また、講習会や勉強会も行い周知すると、より徹底できます。
次に、会社でSNSマーケティングを行う場合です。インフルエンサーにプロモーションしてもらうときには「スポンサー名を明記してもらう」「必ずハッシュタグをつけてもらう」といった法令を遵守するルールを設けます。インフルエンサーとやり取りをする担当者・担当部門を定めておき、ルールが守られる体制を作りましょう。
ルールに則った、SNS利用を心がけてください。
過去の投稿も適切に修正する
2023年9月30日より前の投稿も、インターネット上で閲覧可能な内容は、ステマ規制の対象です。内容を確認し、必要に応じて修正が必要です。
過去の投稿は、投稿者に修正や削除をしてもらうことが望ましいですが、相手の連絡先がわからない、相手と連絡がつかないといった場合もあり得ます。「表示を管理できない状態」なので、罰則対象になりませんが、連絡した記録は証拠として残しましょう。
過去の投稿も一度点検することをおすすめします。
まとめ
ステマは低コストで行えるマーケティング手法のため、安易に手を出してしまう企業も多いのが現状です。また、マーケティング担当者やインフルエンサーの知識不足によって行われる場合もあります。
ステマが発覚してしまうと、消費者や取引先からの信用を失い、企業のブランドイメージが下がり、売上の減少にもつながる恐れがあります。
適切に対応できるか不安な場合は、SNSマーケティングをサポートしてくれる企業や、SNS運用代行サービスの活用を検討することをおすすめします。
SNS運用代行・マーケティング支援なら
ユナイテッドアニマルズへ
ユナイテッドアニマルズでは、インフルエンサーのマネジメント・プロデュース・育成およびクライアント企業のマーケティング戦略立案・広告・宣伝支援を行っています。
また所属インフルエンサーによるプライベートブランドの開発、クライアント企業とのタイアップ商品開発、販売も行っています。
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